前回のコラムでは、新NISAと企業型DCの構造的な違い、特に「掛金が全額所得控除になる」「社会保険料が削減できる」という企業型DCならではのメリットについて解説しました。
しかし、実務の現場では次のような疑問が必ず生まれます。 「理屈は分かったけれど、社員にはどう説明すればいい?」 「結局、自分(社長)はどっちを使えばいいの?」
後編となる今回は、現場での社員説明のポイントと、プロが推奨する「資産形成の優先順位(ロードマップ)」について、実践的な内容をお届けします。
社員への説明:「給与でほしい」と言われたら?
企業型DC(特に給与の一部を掛金に回す「選択制」)を導入しようとすると、一部の社員様からこのような反応が返ってくることがあります。
「会社で積み立てるより、給与として全額もらって、自分で好きな銘柄(NISA)を買いたいです」
投資に関心が高い優秀な社員ほど、このように考えるかもしれません。しかし、ここには大きな落とし穴があります。そんな時は、ぜひ次のようなロジックで説明してあげてください。
説得の模範トーク
「確かにNISAは便利だよね。でも、給与として受け取ると何が起きるか知っているかい? まず、所得税と住民税が引かれる。そして一番大きいのが社会保険料だ。これらを合わせると、給与額面の約15%〜30%(年収による)が天引きされてしまうんだ。
つまり、会社が『1万円』昇給させてあげても、君の手元に残ってNISAに投資できるお金は『7,000円〜8,000円』に減ってしまうということなんだよ。
でも、会社の制度(企業型DC)を使えば、1万円が税金や社保で削られることなく、そのまま1万円として君の口座に入る。 投資のリターンで最初から20%以上の差をつけるのはプロでも無理だけど、この制度を使えば『スタート時点』でそれだけの差がつく。これを福利厚生として提供したいんだ」
この「手取り最大化のロジック」を理解すれば、合理的な社員様ほど企業型DCの価値に気づいてくれるはずです。
プロが推奨する「最強の布陣」はこれだ
では、結局のところ、新NISAと企業型DC、どちらをどう使えばいいのでしょうか? それぞれの制度には「得意・不得意」があります。
- 企業型DCの弱点: 原則60歳まで引き出せない(ロック期間がある)。
- 新NISAの弱点: 所得控除や社保削減の効果がない。ついつい取り崩してしまう。
これらを踏まえた、社長と社員のための「最適解」は以下のステップです。
STEP 1:まずは「企業型DC」を満額活用する(ベース部分)
何よりも先に、税制メリットが最も大きい企業型DCの枠(最大月5.5万円)を使い切ることを目指します。 これにより、「老後資金(60歳以降)」という人生で最も大きな固定費を、最も効率の良い方法で確保します。強制的にロックされることは、老後貧困を防ぐための最大のメリットです。
STEP 2:余裕資金で「新NISA」を活用する(上乗せ部分)
DCの枠を超えた分や、教育資金・住宅購入資金・結婚資金など、「60歳より前に使う可能性があるお金」は、流動性の高い新NISAで運用します。
この「DCで守りを固め、NISAで自由度を確保する」という2階建て構造こそが、資産形成のゴールデンルールです。
「面倒」を乗り越える価値がある
「新NISAは口座開設するだけだから楽だ。企業型DCは導入手続きが面倒そうだ」 そう感じて二の足を踏んでいる経営者様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、経営において「面倒なこと」の先には、必ず大きな果実があります。 社員様一人ひとりの手取りを増やし、会社の固定費(社会保険料)を適正化し、さらに将来の退職金不安まで解消できるソリューションは、企業型DCをおいて他にありません。
「ウチの会社で導入した場合、具体的にいくら社会保険料が下がるのか?」 「社長個人の退職金作りとして、どれくらい有利なのか?」
もし少しでも気になったら、まずはシミュレーションで数字を確かめてみてください。 「もっと早くやっておけばよかった」と仰る経営者様が後を絶ちません。今こそ、会社の未来のために最適な選択をしませんか?
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