「ようやく後継者の目途が立った。会社は任せられる。でも、自分が引退した後の生活は、一体どうすれば…」

長年、会社の顔として走り続けてきた社長であれば、事業承継という大きな節目を前に、ふとそんな想いがよぎるのではないでしょうか。事業承継とは、会社の未来を後継者に託すこと。しかし同時に、社長ご自身の人生という物語の、大切な「総仕上げ」でもあるはずです。

その総仕上げの重要なピースとなるのが、長年の功労に報いる「役員退職金」。
しかし、その準備の仕方を一歩間違えると、会社の財務を傷つけたり、何より後継者の経営に重い足かせを残してしまったりするケースが後を絶ちません。

今回は、後継者に心から感謝され、ご自身も安心してリタイアするための「賢い退職金準備」について、長年この問題に携わってきた専門家の視点から、率直にお話しします。

見過ごせない、役員退職金準備の「現実的な課題」

これは、多くの経営者が直面する、しかしあまり語られることのない現実です。

1.退職時の「一点集中」というリスク

退職するタイミングで、数千万円の役員退職金を一括で損金計上する。もちろん間違いではありません。しかし、その期の利益が吹き飛び、赤字転落すれば金融機関の評価にも影響します。また、税務署から「不相当に高額」と判断され、一部損金算入を否認されるリスクもゼロではありません。

2.生命保険の「出口戦略」という難しさ

節税や万一の保障として、生命保険が有効な場面は確かに数多くあります。しかし、「節税」という入口ばかりに気を取られ、いざ退職金として現金化する「出口」を考えていなかった、というご相談は非常に多いです。解約のタイミングを逃して返戻率が下がってしまったり、そもそも後継者がその保険をどう扱っていいか分からなかったり…。会社の資産として「塩漬け」になっていませんか?

3.後継者への「見えない負債」という重圧

これが最も避けたい事態です。明確な準備がないまま引退を迎え、後継者が会社の運転資金や銀行からの借入金で、先代社長の退職金を支払うケース。この「見えない負債」が、承継後の新しい挑戦への足かせとなり、会社の成長を鈍化させてしまうのです。

カギは「会社の財産」と「個人の財産」の分離。企業型DCが最適な理由

上記の課題を回避し、円満な事業承継を実現する答えは、いたってシンプルです。
それは、「会社の財産と、社長個人の財産を、元気なうちから計画的に分けておく」ことに尽きます。

そのための最も賢いツールが、企業型確定拠出年金(企業型DC)なのです。

1.【会社の経費】で、社長個人の資産を築ける

企業型DCの掛金は、会社の「福利厚生費」として全額損金になります。つまり、会社の経費を使いながら、社長個人のための資産を、毎期コツコツと計画的に築くことができるのです。退職時に一括で財務を圧迫するリスクを回避できます。

2.会社の貸借対照表(B/S)には載らない「社長の個人資産」

ここが最大のポイントです。拠出した掛金は、その瞬間に会社の財産から切り離され、法的に「社長個人の資産」となります。そのため、会社の貸借対照表(B/S)には載りません。会社の純資産や自己資本比率を傷つけることなく、社長個人の財産を安全に積み上げられるのです。

3.法律で守られた「聖域」の資産

確定拠出年金法という法律により、この資産は会社の債権者から差し押さえられることはありません。万が一、会社の経営が傾いたとしても、この資産だけは確実に守られる。まさに、社長個人のための「聖域」と言えるでしょう。

もちろん、この制度にも掛金の上限額があります。国の定めにより、役員の場合は原則として月額55,000円が上限です。しかし、重要なのは金額の大小よりも、「会社の財産とは完全に切り離された、守られた個人資産を、会社の経費を使って計画的に準備できる」という事実そのものなのです。

後継者が心から感謝する「立つ鳥跡を濁さず」の引き際

引退するその日、あなたは後継者にこう告げます。
「私の老後の資金は、これまで会社が経費で積み立ててくれた企業型DCで、十分に準備ができている。だから、会社から持ち出す退職慰労金は、このくらいで大丈夫だ。残った資金は、会社の未来のために使ってくれ」

ご自身の老後資金がすでに確保されているという安心感は、後継者に対する過度な要求を手放させ、真の意味で「会社を譲る」ことを可能にします。

結果として、後継者はあなたの退職金支払いに頭を悩ませることなく、承継後の事業成長に全速力でアクセルを踏むことができるのです。


「社長、本当にありがとうございます。おかげで安心して経営に専念できます」


後継者に負担をかけず、未来を託し、心から感謝される。これこそが、理想の事業承継の姿ではないでしょうか。

最高の形で、次の世代へバトンを渡すために

事業承継とは、単に会社の株を譲ることではありません。経営者ご自身の人生という物語を、どう締めくくるかという大きな問いです。

後継者に感謝され、ご自身も安心して豊かなセカンドライフを送る。そのための準備は、一朝一夕にはいきません。

「そもそも、自社にとって妥当な退職金額はいくらなのか?」
「今から始めて、10年後、15年後にいくら準備できるのか?」

事業承継と役員退職金準備は、セットで考えるべき最重要の経営課題です。最高の形で次世代にバトンを渡すために、まずは専門家との対話から始めてみませんか?社長の想いと会社の状況に合わせた、最適なプランをご提案します。

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